「終わりなんだね、私たち……」
ポツリとつぶやいた沙織に向かって、俺は首を振った。
「いいや。始まってすらいなかったよ。そうだろ?」
「………………うん」
いつだって俺は、沙織の『2番目』。
それでもいいと思えるほど彼女のことが好きだったはずなのに、いつからかそんな自分に嫌気がさすようなったんだ。
「家まで送るよ。圭と仲直りしな」
車を発進させようとする俺に、沙織はうなずきながら小さく笑った。
「ふふ……」
「ん?」
「ねぇ、弘人。好きな人出来たのね?」
「え?」
ビックリして目を丸くする俺に、彼女は「幼なじみだから分かるわ」と首をすくめて嬉しそうに微笑んだ。
「それなら心から応援しなくちゃ。弘人には幸せになってほしいから……」
彼女の言葉を否定も肯定もせずに、俺は黙って受け流して車を走らせた。
夜の街を運転しながら、彼女の言葉を何度も頭の中で繰り返し唱えた。
「好きな人が出来た」
簡単なことだったんだ。
なんでそんなことを沙織に気付かされたんだか、自分でも不思議だったけど。
きっと逃げていたからだ。
また始まった。
『2番目』にしかなれない恋が。



