「圭と喧嘩したんでしょ?」
俺が尋ねると、彼女は少し間をあけて小さくうなずいた。
そして、ほんのちょっと切なさが滲むような表情を浮かべながら、
「バカのひとつ覚えみたいに弘人に頼ってごめんなさい……」
とうつむいた。
「沙織」
俺は彼女が買ってくれたカフェラテはそのままに、沙織に語りかけるように話しかけた。
「俺が今日来たのは、沙織の話を聞くためでもないし、抱くためでもない。沙織にお願いがあったから伝えるために来た」
「お願い?」
驚いたような顔をした沙織は、俺の言わんとすることをなんとなく悟ったらしく、唇をキュッと結んだ。
そんな彼女に、一言ひとこと丁寧に「お願い」を伝えた。
「もう何かあっても、俺に連絡しないこと。圭と喧嘩したら、自分の力で解決すること。……ほんとはもう分かってるんだろ?自分で解決出来ること」
沙織が僅かに瞳を揺らして、何かを言いかけたのが見えた。
でも、反論できずに俺をただじっと見るだけだった。
その反応を見ると、やはり彼女は全てを分かった上で今までのことをやってきたということが分かる。
俺が頼ってくれる沙織を利用していたように、沙織もまた自分を好いている俺を利用していたのだ。



