医療センターから帰ってきて、ひとり暮らしのアパートの部屋に電気をつけて、ペタッと床に腰を下ろした。




会いたい。

会いたい。

会いたい。



会いたい、と言ったら、すぐに来て欲しい。


この寂しさを埋めて欲しい。




携帯を取り出して、『望月弘人』の番号を画面に表示したところでふと手を止めた。



━━━━━「会いたい」って、言ってもいいんだっけ?


根本的な部分から、私は間違ってるんじゃないか。
だって弘人は、私の『偽恋人』であって『恋人』じゃない。


彼にはまだ忘れられない人がいる。
それならまた『2番目』として扱われるのが目に見えていた。




また、目から涙がこぼれた。






私は弘人のことをほとんど知らない。


性格でさえまだ掴めていないし、会ってる回数も少ないし、彼の過去の恋愛も詳しくは知らない。


でも、それでも。

弘人のことを、好きになりかけてる。


それだけは自分で感じた。






この時、私は決めた。


もしも弘人から連絡が来ることがあったら、この曖昧な関係を解消したいと伝えよう、と。


そう心に決めたのだった。