虹色ファインダー


最後の写真の前に立った時、周囲の音が消えた。
まさかそんなはずないんだけど、そんな気がした。


夕日の沈みかけた海辺。

緩やかに寄せる波打際を歩く、夫婦と見られる男女。

そしてその側を駆ける小さな子供。
砂浜には三人の足跡が残される。

夫婦は寄り添い、子供は二人を見上げる。


心臓が誰かに握られたみたいにキュッと締まる。


足跡のついた砂浜に伸びた、彼らの影がなぜか優しい。


まるで自分の足に根が生えたみたいだ。
その場に立ち尽くしてしまった。

だけど次第に込み上げる少し痛くて、でも温かい感情に押され、私は走り出した。