その日の帰り道、空は濃い藍色に薄くオレンジを滲ませていた。 綺麗。 私はデジカメを取り出してレンズを空へと向ける。 画面に切り取られた夕暮れ空を覗き込む。 やっぱりイマイチなんだよね。同じもののはずなのに、カメラの画面に収めると色を失う。 溜息が出る。 なんでだろう。 奏次郎と話してからは、自分の写真に少しも満足できない。 その時、不意に奏次郎の言葉を思い出した。 「そのものを愛しく思う、か」 私はもう一度カメラ越しに空を見上げた。