奏次郎はベルトに付けていた携帯用の灰皿に煙草を押し付け、私の手からアルバムを抜き取った。


「それが伝わってないなんて、俺の写真もまだまだだな」


そう言って浅く笑った。
そしてじっと写真を見つめながら奏次郎は言う。


「俺が感じたままなんだけどなぁ……。胸が痛いくらい切ないとか、言葉には出来ないくらい綺麗だとかさ」


私は黙って聞いていた。
奏次郎は自分の感情を映し出してたんだ。
キレイなものをただ切り取るだけの私とは違うはずだ。

奏次郎はゆっくりとページをめくりながら続ける。


「撮る時ってのは、それを最高に愛しく思うんだ。そうでなきゃ良いもんは撮れない」