「あんたが桐沢奏次郎なの?」
「え?俺ってそんなに知名度あるんだ?」
信じられない……
こいつが桐沢奏次郎なんだ。
私、あの写真展がキッカケで写真部に入った。
あんなに惹かれる写真を私も撮りたくて。
「私、あんたの写真、見たことあるんだ」
「へえ、偶然だなあ」
私は何だか後ろめたいような、だけどワクワクするみたいな気持ちになった。
汗が滲み出した手の平を擦り合わせていると、奏次郎が問い掛けた。
「お前は?名前何ていう?」
私は混乱する頭をどうにか落ち着かせながら答える。
「あ、綾香。松本綾香」
「綾香ね」
奏次郎は不敵に笑った。


