私は一枚一枚、丁寧に写真を眺めて見る。
空を仰ぐ子供。
水辺にたたずむ猫。
夕暮れに浮かぶカップルのシルエット。
その全てが私に語りかける。私の心がそれに応える。
つまり、このこと?
心が動くってこと?
だけどどうすれば写真で気持ちを語れるかなんて、やっぱり分からない。
結局技術なんじゃないかって思う。
私は一冊分の写真を見終わり、パタンと閉じた。
すると黒い裏表紙に白い文字が書かれていた。
“奏次郎”
「そうじろう?」
「それ、俺の名前」
知ってる、この名前。
私が始めて見に行った写真展で衝撃を与えた、悲しそうに空を見つめる少年の写真。
あの撮影者は……


