一瞬、目の前が真っ白になった。


アキが何かの説明をしているけれど、全く頭に入ってこない。


ただわかったのは、女性器と男性器の両方を持って生まれる人がごくまれにいるということだけだった。


そして、それがアキ……。


「男として生きるか、女として生きるか。それを決めなきゃいけないんだ」


アキの頬に涙が流れた。


さっきと同じように手を伸ばしかけて、途中で止まる。


さっきまでのアキと同じなのに、なぜだか触れる事が出来ない。


それを見て、アキは少しだけ笑った。


「ごめん。帰ってくれる?」


アキはあたしから離れてそう言った。


あたしはぼんやりとした頭のまま、言われた通りアキの部屋を出る。


1人で家へと歩きながらあぁ、そうか。と、考えた。


アキに触れられなかったのは、さっきまでのアキと同じで、だけど同じじゃなかったからだ。


性別がないと知った瞬間、あたしの知っているアキではなくなってしまったからだ。


あたしはアキの最後の笑い声を思い出していた。


諦めたような、やっぱりかと納得したような笑い声。


「あたし最低じゃん……」