帰り道。



制服の胸ポケットに入れていた携帯が鳴った。



蒼?



「もしもし」



「蒼ー?



どうしたの?」



蒼は笑ってるようだった。



「何?」



「わかんないの?」



全っ然わかんない。



「背中」



背中?



「あっーーーー!!」



私の背中にはリュックがなかった。



「今から取りに行く!!」



180度方向転換して、病院へ走った。



病院に入ったら、美優ちゃんに話しかけられた。



「にこちゃん?



どうしたの?」



「蒼の部屋にリュック忘れたの!!」



美優ちゃんは大笑いだった。



また走り出す私に、美優ちゃんは



「また転ばないようにねー!」



と笑いながら言った。



「蒼っ!」



勢いよくドアを開けた。



苦笑する蒼。



「あったーー!」



椅子の上に、私の白いリュック。



「走り疲れたから、休憩してっていい?」



蒼は頷いた。



「もう12月だー!



そういえば、24日にコンテストがあるんだよ!



クラリネットで出るんだぁー!」



蒼は、



「へぇー!



見に行きたいな」



って、悲しそうに笑った。



「…」



そんな顔しないでよ。



泣いちゃいそうになるから。



「絶対金賞とるっ!」



蒼に背を向けた。



「あっ、そういえば今日、お母さんと買い物行く約束してたんだった!



また、明日ね!」



そう言って、病室を飛び出した。