あの日、雨と傘と君と


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「だーから、それが恋っていうの」


咲奈の一言に、紫雨の飲んでいたリンゴジュースの紙パックがズコッと潰れた音をたてた。


「いや、恋とかじゃないよ…」


昨日の翌日に当たる今日、咲奈に高杉さんのことを思い切って話したらこの有り様。


お昼休みだというのにさっそく恋話をしてくる。


足を組んで箸を私に向かって指しているところは、まるで警察みたい。




「なんで?なんで恋じゃないって分かるの?」


「だって相手は大学生だよ?しかも出会って間もないし」


私が言いたいことを感じ取った咲奈は、一度静かにうつむいた。


「高校生とか大学生とかそんなの関係ないよ。だってドキドキしたんでしょ?離れたくないって思ったんでしょ?」


「…うん」


傘を返してもらう時、早く会いたいって思った。


笑顔を見て胸がぎゅうってなった。


別れる時、もう会えなくなると思ったら悲しくなった。


小さな仕草、行動全部にドキドキしてた。


離したらいけないって思った。


無意識に口実作って誘ってた。


―あぁ。もう答えは出てたんだ。


自覚したとたん顔がぼぼっと熱くなった。