そこには、君が






トントントン…


シュッ。


音が響く。


床を跳ねる音。


ゴールを潜り抜ける音。


真っ暗な部屋の窓ふちに座り、


飲み物片手に、耳を澄ます。


音楽もテレビも付けない。


余計な音は出さない。


灯りだって、最低限いらない。




「また入った…」




静かな空気の中で、この音を聞くのが好き。


私の気になる人は、家から少し離れた


場所にある公園に、決まった日に現れる人。


火曜日と木曜日と、土曜日と日曜日。


だから私は、その日だけ絶対家にいて、


彼の音に酔いしれる。


部屋の窓から見える所にある、


公園に1人、知らない男の人。


見えても小さくて、


どんな見た目かも性格も知らない。


初めてその人を知ったのは、


1か月前の木曜日。


寝ようと電気を消し、


ベッドに潜り込んだ時。


トントントン…


シュッ。


音が聞こえた。


ボールが跳ねて、音になり。


ゴールに入って、音になる。


こんな音、今まで聞こえたこともなくて、


だけど何か心地よくて、体が騒いだことを


今でもよく覚えてる。






「人がいる…」





時間は深夜1時。


こんな夜中に、公園に人がいた。


じっと目を凝らして見てみても、


どんな人なのかも分からない。


だけど、聞こえてくる音だけは、


私を確実に蝕んでいた。






「綺麗…」





そう思った私は、


窓ふちに座ると、


静かに目をつぶり眠っていた。