そこには、君が






「たまには掃除、してね」



「洗濯も溜めないで」



「寝坊、しないように気をつけてよ」





言っても言ってもキリがない、


大和への文句とも取れる注意事項を。







「うっせえ」





私はたくさん並べた。


大和の耳に残るように。


私の声を忘れないように。


そんな私の言葉を制したのは、


大和の強引な、深いキス。






「んっ…」






コーヒーの味がする。


この苦味さえ、


忘れたくないと思う。







「お前がいない間は、ちゃんとやるから」






大和は私の目をじっと見て。


少し笑って、真剣に言った。







「でもこれだけは言える」





「…ん?」






大和の額が私の胸元に埋まると。


優しく温かい声で。







「お前がいないと生きていけない」






愛しくて、おかしくなりそうで。


もうすぐ涙腺は崩壊する所だった。







「だからちゃんと待ってる」






「分かった…待ってて」






じゃあ、と。


大和はドアノブの手をかけると。


思い切りドアを開けて。


外へ出る。







「行ってきます」





「ははっ、いってらっしゃい」






大和は私を笑わせようと、


私にお辞儀をして行った。


そんなことしたことないじゃん、って。


私はまんまと笑って、手を振った。







「はははっ…、はは…っ、うっ…やま、と…」





その笑いは突然嗚咽に変わり、


堪えていた涙が一気に押し寄せる。


もう立っていられなくなり、


その場にしゃがみ込んだ。


どうして大和より遅くの時間に出る便に


したんだ、と。


今更遅い後悔をした。


こんなに悲しい思いをするなら、


昨日に出ておけば良かった、とか。


どんどん色んなことに後悔が押し寄せる。


だけど。


そんなことをしていても、


時間は止まってくれない。


目を瞑れば明日が来る。


昨日の大和の言葉が頭をよぎり、


私は思い切って立ち上がり、


べそをかいたまま机に向かった。


最後に大和が帰ってきた時に、


寂しくないように、と。


手紙を書くことにした。