次の日の朝。
いつもの時間に起きて、
大和のお弁当を作る。
前日に作っていたおかずを詰め、
今日はデザートまで添えた。
いつも通りに大和を起こし、
私も同じように身支度を済ませる。
「ご飯にする?」
「いーや、食パンで」
「ジャムは?」
「今日はいらね」
普段通りの会話。
歯磨きをする大和に、
朝食のことを投げかける。
水筒にお茶を注ぎ、
小さいステンレスのマグに
コーヒーを淹れる。
お弁当にお箸をつけて、
保冷バッグに詰めて玄関に置く。
その間にシャツを出してネクタイも選び、
柔らかいハンカチも一緒に出す。
「今日、忙しいの?」
「部長に挨拶回り連れてかれるらしい」
あの大和が、上司の言うことに
忠実に従って仕事をこなしている。
きっと、学校の先生たちが知ったら、
みんなギックリ腰になっちゃうな。
「じゃあバタバタするね」
はい、と朝食用のコーヒーを出す。
大和は着替える前にいつも朝食を食べ、
優雅にニュースを見ている。
日々おじさん化している気がして、
1年後には貫禄まで付いてるんじゃないだろうか。
「明香、ネクタイ」
「もう、自分でやってよ」
大和は自分が慌てていると、
ズボンを履いている側で
ネクタイを結べと言うのだ。
いいように使われる私は、
嫌だと言いつつやってしまう。
「じゃ、行ってくるわ」
「あ、大和」
この場面も、今日で最後だ。
「明日と明後日の着替えは、ベッドの端に置いてあるからね」
なるべく大和が困らないように、
私は全部を言葉で伝える。
「冷蔵庫には作り置きあるけど、なるべく早く食べて」
「はいはい」
「洗濯の時、柔軟剤入れすぎないように。匂いすぎちゃうから」
「分かりました」
歩みを止めることはなく、
私は進んでいく背中に声をかける。
うるさく言っているのは分かっていた。
だけど、そうでもしないと、
私の涙腺が持たない。


