そこには、君が







「いつかここで花火を見よう」




私は頷くことが出来ない。


来年の夏、どこにいるかも


分からないのに。





「秋にはキャンプに行く」





その想像の中に、私がいるかも、


分からないじゃない。






「冬は鍋」





「もういいよ、大和」





私は笑って、大和を見た。


大和らしくない、先の話が、


私の寂しさを募らせる。







「お腹空いた」






「ん、帰るか」






私は大和と、最後の夜を過ごした。


一緒に夕飯を作りながら、たくさん笑った。


いつもは手伝おうとしない大和を呼び、


煮たり焼いたりと簡単なことをお願いする。


不満など一切漏らさず、


大和は私をフォローした。


お腹が見たされた後は、


一緒に映画を観た。


それは私たちが大好きな映画で、


中学の時に大和が買ってきた物だ。


何度も何度も。


最初に戻しては繰り返し見たせいで、


セリフや登場時間が全部頭に出てくる。


最後に主人公であるヒロインは旅立ってしまうのだが、


そのヒロインを想う彼はこう言うのだ。






「さようならは、再会の合図だ」





彼が言うタイミングで大和も言った。


私も、心の中で一緒に言った。


さようならは、再会の合図。


初めて見た時は、本当だろうかと、


不信感が少しあった。


でも今は、その言葉すら信じたいと思ってしまう。






「寝るか」




「明日も仕事だもんね」





いつもだったら次の日のために、


早く寝る大和も、


今日は私に合わせてか


長く起きている。






「明日何時に出るんだっけ」





「んとね、家を10時前に出て、飛行機が11時40分に発つかな」






真っ暗な部屋の中でベッドに寝転び、


手を繋いで天井を見上げる。


カーテンの隙間からは、


夜の光が少し差していた。







「明日の夜は京也と飯行ってくる」





「うん、分かった」






いつも通りの、夜。


何も変わらない会話を、


あえて選んで交わす。