そこには、君が






それからしばらく、


私は教室から出るのを止めた。


いつ黒田くんに会うか分からないし、


どう対応していいかも分からない。


大和を怒らせたくもないし、


みんなに誤解もさせたくない。


そんな時間を過ごしていると、


あっという間に10月になった。






「お昼買いに行くんだろ?」






「1人で行ってくるから、大丈夫…」







最近は3人とも気を遣って私を、


教室から連れ出そうとしてくれる。


でも、またあんな風になったらと思うと、


もうどうしても体が動かなかった。


放課後も、どうには会わないようにって、


校門はダッシュで駆けた。


なのに私としたことが、


今日の昼食を持ってくるのを忘れてしまった。


朝、少し寝過ごして起きるのが遅かった私は、


遅刻ギリギリで家を出たんだ。







「でも、」






「本当大丈夫!3人で先食べてて!」







私は捨て台詞のようにそう伝えると、


財布を持って教室を出た。


手には、大和との旅行で買った


お揃いのキーホルダーを握りしめて。






「めっちゃ混んでるし、」




購買は大混雑で、


すぐには買えない状況だ。


仕方なく順番待ちの列に並び、


気付けば昼休みがあと15分で終わってしまう。


お腹の空いた私は自分の腹を宥めつつ、


どうにか購入できた時。






「あ、棚橋さん!」





声が聞こえた。


私は聞きたくなかったその声に、


嫌ほど反応した。


体が強張る。







「今日はパン買ってるんだね」






「あ、うん」






私は何も語らず、その場を去る。


すると黒田くんは突然。






「永森くんってさ、あんまり愛情表現とかしてこないでしょ?」






「え…?」






突然大和の名前を出してくる。


私は少し動揺して、立ち止まってしまった。








「でも乱暴な様で優しい。きっと丁寧に愛してくれるんだろうね」






黒田くんは遠くを見ながら、


大和の話をしてくる。