そこには、君が






「むむむ、っ、向こう見ててよねっ!」





「わーかったって」






湯に浸かる前に髪や体を洗う。


シャワーは1つしか無いので、


お互い交互に洗うことに。


私はタオルを体に巻いてはいるが、


体を洗うために外さないといけない。







「見てない?」






「だから見てねえって」






しつこい、と怒り口調の大和は、


目を瞑りながら髪を洗っている。


私は本当に見ていないか確認するため、


チラチラと大和の方を見た。


本当に、こんなにまじまじと


見つめたことがなかったから。


腹筋とか、胸筋とか、


なんかもう意識せずにはいられない。


結局宣言通り見ていないのを確認し、


洗い終わった私は大和を残して、


先に湯に浸かることに。







「気持ちいいよ、温泉」






シャワーの音で聞こえていないだろう大和に、


堂々と声をかける。


白濁とした湯に入ってしまえば、


タオルも巻いているし、


見られることへの不安感はない。


私は髪を縛り上げ、上で丸く結び、


大和が来るのを空を見ながら待った。







「失礼します」






「あ、どうぞどうぞ」






わざとな他人行儀な態度に合わせ、


私も少し距離を空ける。


夏真っ只中とは言え、


夜風は少し気持ちいい。







「温泉とか久々」






「よく京也と行ってるじゃん」






「銭湯はまた別だろ」







そこから見える海はもう真っ暗で、


少し耳を澄ませば波の音が聞こえてくる。


私たちが体を動かせば、


水音がパシャっと鳴る。


異様に艶かしい空気だ。







「大和、ありがとうね」






「まだ終わってねえよ」






この旅行もそうだけど、


全てにおいてありがとうだ。


大和に守られている。


それが何より嬉しくて。







「大和ってさ、」







急に聞きたくなった。


私は何も考えずに、


質問した。






「私のどこが好きなの?」






「なんだそれ」






大和は照れているのか、


湯をパシャっと音を立てるかのように叩いた。


私はそれが少し面白くなった。