そこには、君が








「ごゆっくりどうぞ」





「ありがとうございました」






夕食を早々と済ませると、


お皿を下げるのと引き換えに、


ふかふかの真っ白なバスタオルや、


色違いの浴衣を置いて行ってくれた。


部屋に露天風呂はあるが、


大浴場にも色んな種類の温泉があるらしい。


少し休憩をしながら、淹れたお茶を飲む。


テレビをつけようとしたがタイミングを逃し、


沈黙の男と2人で向かい合っている。


なんで、黙ってるの?


そう思いながら見ていると、


大和が急に顔を上げた。


そのせいで目が合って、


私は思い出してしまった。


朝の緊張感を。








「風呂、」






「っえ…お風呂!」






「入るだろ?」






「あ、うん。入る、よね」







一気に張り詰めた空気になる。


どう動いたらいいか分からない私は、


とりあえず浴衣とバスタオルを持ち、


外に出ようとする。







「何してんだお前」







「…へ?お風呂…だよね?」






「あるだろ目の前に」






顎で指し示す先には、


部屋に付いている露天風呂。


まさかとは思うが、


ここに入れと言うのか。









「だ、だって…ここ、見えるでしょ、」






「見えるも何も、一緒に入んだよ」







イッショニ、ハイルンデスカ…?


頭がおかしくなりそうなほど混乱している。


確かに部屋に露天風呂があるということは、


まさにそのためにこの部屋を予約したわけで。


だけど一度も一緒になんて入ったことない私たちが、


急に旅行先の露天風呂に一緒に入るなんて。


ちょっと、ハードル、高すぎませんか?








「嫌?」






「いや、あの、嫌というか…嫌じゃないけど、」






「だったら脱げ」







そう言って大和は私の服に手をかける。


私は大慌てで、それを制した。








「まままままっ、待って!自分で出来る!脱ぐから!」






「ならいい」






手を離した大和は、


意地悪な顔をした。


そして小さく、


何もしねえよと、


そう言った。