「春太!」
そこへ。
お店の入り口が勢いよく開き、
走って入ってきた1人の男の人。
「徹…、」
「お前!別れるって、正気なのか?だって、お前…、何も!」
信じられないと言いたげな様子で、
徹平は春太さんに詰め寄る。
そしてぎゅっと肩を握り、
悔しそうに服を掴んだ。
「って、え…明香?」
「あ、うん…久しぶり、」
私がいると気付いていなかったのか、
ちらっと見て驚いた顔をしている。
私も少し気まずくなって、
言葉に詰まる。
「お前…っ、凛ちゃんと会うって、」
「流石に言えないだろ。明香ちゃんと会うなんて」
なるほど。
春太さんは徹平を気遣って凛の名前を出し、
徹平は別れを止めに来たというわけだ。
「明香ちゃん、本当呼び出してごめん」
「いや全然私はいいんですけど。全部凛に伝えてあげないとですよね」
「凛には明日話をするつもり。しばらくだけ、支えてあげて欲しいんだ」
ちゃんと考えて行動をしてるんだ。
凛のことを思うが故の行動。
後のことまで考えるなんて、
本当に好きなんだな。
「全然支えます。凛は私の大事な友だちですから」
「本当に、これで最後だと思うから」
春太さんは納得できていない徹平の横で、
机に突っ伏すくらいに頭を下げた。
「本当に、今までありがとうございました」
泣きながら私にお礼を言う姿が、
もう何も言葉に出来なかった。
春太さんの思いを受け止めて
あげることしか私は出来ない。
それもまた歯痒い思いだった。
「じゃあ、俺たちそろそろ帰るね」
徹、行こうと。
春太さんは徹平の腕を引っ張る。
「春太、待てって。本当にいいのか?」
当の本人である春太さんより、
徹平の方が焦っている。
その姿にも胸を打たれるし、
私も辛くなった。
「俺のせいだろ?俺が凛ちゃんに謝るし、誤解も解くから…っ」
「いや違うよ。それは違う。俺と凛の問題だから」
春太さんはどんな気持ちで、
言ってるんだろう。
徹平はどんな気持ちで、
聞いているんだろう。
悔しい。
全てが悔しいし、
見ていて辛い。


