「ちょっと。寝てるとか有り得なくない?わざわざ来たのに、何で寝てんの?」
ねえ、と。
もう一度呼びかけた、時。
背中に人の気配がして固まった。
一瞬の出来事だったから、
身動きは取れなかった。
「わ!!!!!!!!!!!!!」
無言で肩を押され、
私は今世紀最大くらいの
叫び声を上げた。
驚きすぎて腰が抜けた。
まさか背後に現れるとは思いもしなくて、
油断をしていた。
私が転んだ拍子に何かが転がってきて、
私はそれにしがみつきながら
身を縮める。
「なにビビってんだ」
そう言いながら馬鹿にしたように
笑う大和の声だけが耳に届く。
心臓がドキドキして止まない。
「本当最低すぎる馬鹿、」
大和はようやく部屋の電気をつけ、
視界が明るくなった。
それと同時に分かったのは、
私がしがみついていたのは
バスケットボールだということだ。
「腹減った」
「何よそれ」
手元にあったボールを大和に投げる。
この男は、私に腹を満たすことしか
望んでないのか。
「じゃあ何か作ろっか?」
「冷蔵庫、何もない」
「じゃあ買ってくるよ。何がいいの?」
結局かい、と思いながら、
立ち上がり背伸びをした。
驚いて身を縮めすぎて、
体が固まっていたのが分かる。
「俺も行く」
「何なのそれ。もう最初から1人で…」
「行くぞ」
春先の夜は、まだ寒い。
私は大和が着るはずだった上着を羽織り、
先を歩く暴君の後ろをついて行った。
「ね、これ美味しそうじゃない?」
「じゃあそれ」
「じゃあ、じゃなくて。大和の食べたいの入れなよ」
本当にこの人は腹が満たされれば、
たとえどんなものでも口にする。
私は主張をしない大和を横目に、
とりあえず適当に食料を入れた。
何だか少し眠そうな大和のことだから、
きっと帰ったら寝ると言い兼ねない。
そんな気が、もう自然にする。


