「別に、呼ばなくても、」





「ちょっと、いい?」







私に触れるか触れないかの距離まで


詰める徹平。


視線は私の後ろに流すと、


そこにいるであろう大和たちを


手招きしている。


嫌だった。


何も読めないその行動が。


徹平の中に私がいない気がして。







「何ですか」






棒読みの大和の声が聞こえる。


語尾を上げることもなく、


ただ無機質な返答に、


背筋が凍った。


けれどそれは、怒りとかそういう感情じゃなくて、


何も無い、どうもしない感情だった。









「今日の夜、空いてる?」







「はい」







間髪入れない大和の返事を、


京也が制止している。


やめろと言わんばかりの京也の声が、


頼もしく感じた。


きっとこの状況を冷静に判断出来ているのは、


少なからず京也だけだ。







「遊びに、来ない?」







徹平はそう言った。


ふと顔を上げると、


口元だけ笑った徹平が


ずっと大和を捕らえて離さなかった。









「いいすよ」






予想とは真反対に動く大和の行動に、


私は内心をバクバクさせた。


徹平は日時を簡単に知らせると、


大和の了承する声だけが聞こえて、


京也が何を言っても事態は変わらなかった。







「や、」






流石にまずいと思った私は、


勇気を振り絞り振り返った。


なのに大和はもう視線に映ることはなく、


私の横を颯爽と歩いて行った。


少し、触れた。


というより、ぶつかった。


私たちから遠ざかる大和たちは、


今の私たちの距離を示しているようで。








「なん、で」






「多い方が、いいと思っただけだよ」







分からなかった。


この場面で笑える徹平も、


誘いに乗った大和も、


止めきれない自分も。


隣にいる凛はあたふたしながらも、


とりあえず行こうとその場を収め、


肩を並べて買い物へ行くことにした。


さっきまでのウキウキは微塵もなくなり、


出来ることなら今すぐ帰りたかった。