そこには、君が






部屋に戻ると、


食事が運ばれてきた。


まだ出るか!ってほどの、


すごく豪勢な食事で、


お腹がいっぱいなった。







「お布団の用意に参りました」





数人の仲居さんが部屋に来る。


と、同時にトイレと徹平さんは、


部屋を出ていく。







「あの、こちらの荷物は…」







「あ、すみません!今、動かします!」







布団を敷くのに邪魔な私たちの


荷物を動かそうと立ち上がる。


動かし終わって間もなく。


旅館に来て、初めて携帯を手に取った。








「うわ、」








手に取られるのが分かっていたように、


携帯がブルブル震えだした。


音さえ出ていないものの、


しっかり存在がアピールされる。


画面に表示されたのは、


ずっと話していない、大和の名前。









「あ…、」







出るか、出まいか。


悩んでいるうちに、


電話が切れた。


初めて電話に出なかった。


後悔し始めた時。


もう一度、電話が鳴り、


一秒も待たないうちに


電話が切れた。








「ごゆっくりお過ごしくださいませ」







仲居さんたちはそう言うと、


今度は徹平さんと入れ違いに


出ていった。








「明香ちゃん、今さ」








何で二回目は、切ったの。


どうして自分からかけてきて、


切っちゃったの。








「…どうか、した?」







「…え、いや!布団温かそうだなって…」








苦し紛れの言い訳。


頭の中を、携帯の震えが支配している。


離れない訳じゃない。


だけど、離せない。









「そっか。寒いよね」






「いや、別に寒くは…」






「さっき、仲居さんにさ。この辺に夜景スポットがあるって聞いて」








行こう、と。


言いたい。


そう体が言っている。