「お腹いっぱいです」
「食べすぎだ、俺」
夜道。
といってもまだ21時頃。
多分気を遣ってくれている。
本当はこの後、
2人でどこか行く予定だったのに。
「本当は今日、どこ行こうと思っていたんですか?」
「友だちに教えてもらった、とっておきスポット」
次回のお楽しみ、と。
言葉を濁して何も教えてくれない。
ケチ、と言葉を漏らしてみると、
勝ち誇った顔で私の鼻をつまんだ。
「ひょっと…!」
「なに?聞こえないよ?」
鼻をつままれたまま、
じゃれ合って交わす会話。
通じ合わないそのものこそが、
結局のところ楽しみんだ。
私は徹平さんしか瞳に映さず、
他を入れる余裕がなかった。
が、故に。
「明香」
こんなことが起きてしまったんだ。
「…な、んで」
「何してんだ、お前」
ドキ、も。
ビク、も。
何も感じない。
ただ心の中では、
しまった、と。
そう思った。
「…大和、…ど、して」
いつも見る、部屋着の大和の手には、
近くにあるコンビニ袋が1つ。
買い物を、したのだろうか。
この時間の、このタイミングで。
「お前、何して…」
「こんばんは、この前はどうも」
その言葉で思い出すのは、
文化祭の時か。
そっか。
2人は前にも、会っている。


