「奏、多分絶対引くつもりなんてないと思うよ」
「それは、玲もでしょう?」
「そうだけど……」
「決めるのは、美琴だよ」
そう、決めるのは……私
「そうだ。今度の夏祭りって予定空いてる?」
「夏祭り?」
そう言えば、そろそろ大きな夏祭りが近所であるんだっけ
「毎年行ってるあの夏祭り。夏っていろいろと祭りがあるけど、僕はあの夏祭りが一番好きだなぁ」
ここら辺じゃ一番大きなお祭りだ。
当日は、屋台の通りがいくつも出来、大勢の人が集まる。
暗くなると、何発もの花火が打ちあがり、夜空を彩る。
私達は、小さい頃から毎年来ている。
「悠太こそ、スケジュール大丈夫なの?」
「んー、何とかするよ」
「そっか。私も、ママと相談してみるね。皆も来れるといいね」
去年はStarRiseの皆と行ったのを、今でもよく覚えている。
「今年は皆とじゃなくて、僕と二人で行こうよ」
「二人で?」
「そうだよ。去年だって本当は二人で行きたかったのにさ、せっかくだからって……」
顔は見えなくても、膨れているのが良くわかる。
「でも、楽しかったよ?」
悠太は楽しくなかったのかな。
ゴソゴソと体の向きを変えると、私を見た。
「そりゃあ楽しかったよ。でも僕は、千代と二人で行きたいの。誰にも邪魔されたくない」
目が合う。
熱い眼差しが心臓をつつくみたいで痛い。
「……考えとくね」