二人に挟まれたまま、私たちはいつものレッスン室にやってきた。
「よお……ってお前ら、なんかあったのか?」
隼人くんが、物珍しそうに言った。
「ちょーっと、いろいろあってね〜」
「ねぇ、暑いよ」
「ほら、圭くんが離れるべきだよ」
「いーや、悠太が離れるべきだな」
「いやいや、お前ら2人とも離れろよ」
「はーい、悠太くん離れようね〜」
と、拓巳くんが悠太の腕を引き
「ゴミは離れろ」
と、流くんが圭くんの腕を引く。
「はぁ……」
レッスン室の冷気が、両サイドの熱気を取り払う。
「千代、良かったな」
流くんが小声で言った。
「うん」
「これでやっと悠太の顔も晴れたな」
「隼人くん、それどういうこと?」
「だってよ、夏休み入る少し前からずーっと、この世の終わりみたいな顔してたし」
「だな」
「今の悠太くんは、闘争心に満ち溢れてるみたいだね」
「なんてったって、俺と悠太はライバルだからな!」
「圭くんがライバルとか、本当無いよ」
「ひっどーいっ」
「はいはい、2人は勝手に張り合ってろ」
「ライバル……か」
「流くん、ライバルがどうしたの?」
「いや、なんでもない」
「千代ちゃん争奪戦だねー。……敵は多し……だね……」