翌日、待ち侘びたインターホンの音に、いち早く駆けつけた。
ドアを開けると、むわっとした夏独特の空気と、微かに蝉の声が聞こえた。
「おはよう、千代っ」
夏らしい半袖のTシャツを着た悠太が、笑顔で言った。
「おはよ」
もう、昨日の弱虫な面影は消えていた。
「もう支度できてるの?」
「うん、ばっちり」
「よし、じゃあ行こっか」
「ん?」
手のひらを差し出してきた。
この手は一体……
「手、貸して」
「い、嫌だよ……」
もしかして、手を繋ぐ気?
「えっ……」
それまでの笑顔が、一気にしゅんとしぼんだ。
「あ、悠太と手を繋ぐのが嫌って訳じゃないんだよ」
「じゃあ、どうして?」
「暑い……から」
手汗かいちゃうし
「なら、我慢する」
出した手を引っ込めて、エレベーターのボタンを押した。
その間に、戸締りをすると、丁度エレベーターが最上階までやってきた。
少しだけ涼しいエレベーターに乗って、エントランスまで出ると、見覚えのある人物が立っている。
「やっほー。あ、仲直りしたんだ〜?」
片耳にピアスを付け、派手な格好のチャラチャラした見た目。
知っての通り、圭くんだ。
「ねぇ千代、なんで圭くんがいるの?」
最悪と言わんばかりの表情で、圭くんを指さした。
「し、知らない」
ぶんぶんと頭横に振った。
「愛しの千代ちゃんを迎えに来たに決まってるじゃんか〜」
「はぁあ……昨日グループトークで千代がレッスンに来るなんて、言うんじゃなかった」
「悠太はさて置いて、千代ちゃんは今日も可愛いね!生足!最高!」
「は、はぁ……」
なんて朝からテンションが高いんだ。
「ちょ、千代の脚見るなー!!この変態!」
「いやぁ、好きな子のことは上から下まで舐めまわすよう見たいじゃんっ?」
へ、変態だ……
「は?何言って_____今『好きな子』って言った?」
「言ったよ?あれ、言ってなかったっけ?」
「え?」
「俺が、千代ちゃんに告白したこと」
「……………………は?」