その日の放課後
「ふんふふ〜ん」
鼻歌を歌いながら、足取り軽やかに帰路を歩く悠太。
そしてその隣に居る私。
「そんなに嬉しい?」
「千代が誘ってくれたからね〜」
「私が誘わなくても来るつもりだった癖に」
「まあね」
…………これは少し前のこと
『ちーよっ。僕、今日はもう撮影ないんだよね』
『良かったね』
『それだけ?』
『ん?それだけだよ』
『このあと暇なんだけどなー』
もしかしてこれは、"家に来る?"って言って欲しいのかな。
『……これから家に来る?』
『……っ!うん!』
みるみるうちに悠太の顔はキラキラと明るくなった。
……という訳で今、首が痛くなるほど高いマンションの前までやってきた。
マンションの入口で、センサーにカードキーをかざしドアが開く。
それから、エレベーターに乗り、最上階の『PH』とかかれたボタンを押す。
エレベーターを降りると、直ぐ目の前には玄関が見える。
そこを潜れば広い廊下に、その奥には広いリビング。
部屋はいくつもあって、使ってない部屋も多数ある。
さっきの『PH』というのは『ペントハウス』ということで、このマンションの最上階全面、他の階で例えると部屋数にしておよそ8部屋分の面積全てが私の家。
小さい頃からここに住んでいるからもう慣れてしまったけど、多分初めてくる人は驚くんだろうなぁ。
ま、今まで家に来たことのある人物は悠太くらいだけど。
「相変わらず千代の家は広いよね。それに静か……」
「この広さに独りで居るのは、ちょっと寂しいけど……でも、もう慣れちゃった」
「そうだよね、社長も紗代里さんも忙しいから……。うん、やっぱり、出来る限り時間がある時は僕が傍に居るから!」
「悠太じゃ頼りない」
「………ぼ、僕じゃダメってこと?」
「嘘だよ。悠太が来てくれるなら、私嬉しいな」
「本当!?じゃあ毎日でも……」
「撮影もあるんだから、毎日は無理だよ。」
「だよね……。はぁ、アイドルがこんな忙しいとは思わなかった」
悠太は身長も高いから、雑誌のモデルにも抜擢されている。
その分、お仕事も増えるわけで……
今こうして隣に居るのに、遠い存在に感じてしまう。
今までずっと一緒居た分、寂しいと感じるのは事実。


