セットされたスタジオでPV撮影が行われる。
衣装に着替え、セット内の立ち位置に立つ。
「さ、いっちょ頑張りますか!」
隼人くんの掛け声で、みんなに気合が入る。
よし、僕もちゃんとしなきゃね
曲に合わせて、振り付け通りに踊りだす。
楽しくて、作らなくたって自然と笑顔になれる。
「はっ………」
何カットか撮り終え、休憩に入った。
水を片手に、パイプ椅子に身を完全に任せた状態で座る。
「流くーん、今何時?」
「ちょうど5時」
5時かぁ……千代はもう家に帰ってるよね
何してるのかな
「悠太。振り付け確認するからちょっといいか」
「あ、うん」
撮影が終わると、各自帰宅する。
拓巳くんと流くんは用があるからって足早に帰っていった。
残された僕達は、駅まで歩き、方向の違う拓巳くんと別れた。
「なあ、悠太はさ………」
「なに?」
「ん、いや、やっぱいい」
「何それ。そこまで言われると気になるんだけど」
「……お前も大変だなって思ったんだよ」
大変?
「何が?」
「ライバルが多いだろ」
何の?
主語をくれ、主語を……
「……」
「恋の話だよ。そうすんなりとはいきそうにないよな」
「……隼人くんが恋の話とか、なんか気持ち悪いよ?熱でもあるの?」
「なっ、気持ち悪くはないだろ!」
いやいや、隼人くんの口から今までそんな話なんて出たことないし、そりゃあ……そう思っても仕方ないと思うんだけど
「で、いきなりどうしたの?」
「さあ、どうしたんだろうな。なんとなくお前のこと見てて思っただけだ」
「ふーん、そ」
なんか、変な気もするけど、あまり詮索はしないでおこう。
電車に乗ると、もう会話はなくなっていた。


