しばらくして出てきたパスタは、綺麗に盛り付けされていて、とても美味しそうだ。
フォークにひと巻きして、パクリと口に入れる。
いい感じのソースの味と、程よい茹で加減のパスタ。
ファミレスで食べるものより、断然美味しい。
お客さんが少ないのが不思議なくらい。
「千代、このあと行きたいところあるんだけど、いい?」
店員さんが居ないのを確認し、小声でそう言った。
「うん」
頷いた。
まだ時間に余裕はあるしね
パスタ完食すると、直ぐにお店を出て、悠太に手を握られながら歩いた。
また、昔を思い出す。
『ほら、悠太行こう?』
『え、でも……』
『2人で一緒に行けば大丈夫だよ』
流れの穏やかな川を、大きな岩を伝って渡ろうとしていた。
けど、悠太は怖いと言った。
だから、私が手を引いて、一緒に渡ったんだ。
あの頃は、いつも私が悠太の手を引いていた。
今じゃ立場が逆転して、なんだか不思議な気分だ。
「着いたよ」
「ここは……」
どこからどう見ても、川だ。
森林公園の中にある、小川。
静かで、近くで遊ぶ子供たちの声が聞こえる。
「ここ、あの時の川に似てるなって思って」
「あの時……?」
何となく検討はついている。
さっき、思い出していたあの時の川だ。
「小さい頃、僕の家族と一緒に田舎に行ったの覚えてる?」
そのときは、私だけが一緒に行って、パパとママは仕事だったんだっけ。
「うん」
「あの時、一緒に川渡ろうって千代が僕の手を引っ張ってさ」
「悠太は怖いーって言ってたよね」
「そうそう。昔は僕弱虫で人見知りでさ。千代が幼稚園で話しかけてくれてなきゃ、ずっと一人だったかも」
「かもね」
「……あの時の川とこの川……というか、雰囲気が似てるよね。ここは都会であの場所は田舎で、全然違うのにね」
「確かに、落ち着く。私ね、さっき思い出してたんだ。あの川でのこと」
「そうなの?」
「うん。昔は私が悠太の手を引っ張ってたのに、今じゃ逆だなーって」
「僕も男の子だからね。いつまでも女の子にリードされてられないもん」
「でも、悠太って、ファンの女の子からも『弟みたいで可愛い』『リードしてあげたくなる』って言われてるよね」
「うっ…。もっと別路線で……あ、小悪魔系とかどう?大人っぽくSな感じで______」
「駄目」
スッと口から零れた言葉。
「え?」
予想外で、自分でも良くわからなかったけど。
「あ……えっと、私が言ったファン声なんて一部で、皆が皆そう思ってるわけじゃないんだよ。悠太は充分男らしいし、その…………あのね、別に無理して小悪魔系とかSだとかの路線にいかなくてもいいんだよ」
後付けの理由なのがバレバレだ。
「無理なんかしてないよ。でも……意地悪とかするのは、千代だけにしとくよ。あ、これ前にも言ったかな」
確かに、前に学校でも似たことがあったっけ。
「……うん、私だけにして?」
「っ………反則」
腕で顔を覆った悠太。
隙間から見える悠太の頬が、ほんのり赤く染まっている。
「大丈夫……?」
「全然大丈夫じゃないっ……千代の所為だよ」
耳まで真っ赤だ。
私の所為?
「あー、もう、やっぱり分かってない」
「……ごめんね?」
「謝らなくていいよ。でも、ちょっと我慢出来ないかも……」
瞬間、悠太との距離が近づいた。
チュっと音を立て、私の頬にキスを落とした。
「へ?」
「あそこにいる小さい子達がやってたから、僕もやりたくなっちゃった」
少し離れた場所にいる、小さな男の子と女の子が頬にキスをし合っていた。
最近の子はませてるなぁ。
あ、小さい頃なんて皆そんなものかな。
でも、あれをみて自分もしたくなるなんて……へ、変なの……
「そ、そういうのは好きな子にやるものだよ?」
「……そうだよねー」
少しの間が気になるけど、気に止めないふりをした。
「ちょっと眠くなりそうかも」
「じゃあ、お昼寝でもする?」
近くのベンチに腰掛けると、肩にトンと重みを感じた。
横目で見ると、もう目を閉じてすーすーと寝息を立てていた。
髪が首にかかって、くすぐったい。
私も、悠太の頭に寄りかかって目を閉じようとしたとき___________
「ママー、あの人達イチャイチャしてるよー。かっぷるなの?」
い、イチャイチャ…
「ふふ、そっとしておいてあげなさい」
なんだか恥ずかしくて、眠気が覚めてしまった。
カップルではないけど、こんな状態じゃ、そう見られてもおかしくはないのかな。


