衣装に着替え、メイクさんに完璧なメイクを施されると、スタジオに入る。




「……!千代ちゃん!」



拓巳くん……いや、皆が目を見開いた。




そんなに変かな



「っ……」




そこには何故か悠太も居た。


撮影、終わったのかな



それにしても、いろんな人にジロジロ見られるのは少々恥ずかしい。



「あ、あの……」



「じゃ、じゃあ撮影始めます!」



カメラマンさんのその言葉で、皆我に返ったようだ。




眩しいライトの下、立たされる。




それにしても、コンセプトは何なんだろう……そもそも何の撮影?




何も聞かされずにいる私には、何をしたらいいのかさっぱり。




「えー、じゃあまず千代さんは、そこの台の2段目に座って足を組んでくれるかな。んで、拓巳くんはその1段下で千代ちゃんを見つめて……」



言われた通り、立方体のブロックが敷き詰められた様な階段の2段目に座り、足を組む。



その一段下に拓巳くんが座り、後ろの私に視線を向ける。




「うん、いい感じだね〜」



パシャパシャとシャッターが切られる。




「ほら千代ちゃん、そんな強ばった顔しないの」



拓巳くんが小声で呟く。



そんな事言われても、緊張する……




「千代ちゃん、その格好のまま頬丈ついて拓巳くんと距離縮めてみようか。お互い見つめ合うように……!」



パシャッ、パシャッ



「距離、近いね」


「っ……変な事言わないでくださいっ」




「千代ちゃん、悠太くんが意地悪してきたらどうする?」


突然なんだろう



「突然なんですか?」



「敬語になってる……。まぁ、いいから、答えて」



意地悪されたら……



「そりゃあ……意地悪し返します」



パシャッ、パシャパシャ


シャッター音が続く。




「いい!いいよ、今の顔!そう、千代ちゃんは挑発的に、拓巳くんは慕うように!」



その後も、床に座る私に拓巳くんが膝をついて這うようにし、私の頬に手を添えている姿など、絡みの多いポーズばかりを撮った。



お嬢様とその執事の様だ。



まるで私の方が権力があるかのような……



多分、それがコンセプトなんだろうけど。




それにしても、拓巳くんの表情が妖艶で、とても高校生とは思えない。



あまりにも妖艶な微笑みに、意識が吸い込まれそうで危ない。




「千代ちゃん、綺麗だよ」



「そ、そんなことないです……」




不意打ちは堪える。




危ない危ない、表情が崩れそうになった。





「はい、一旦休憩に入りまーす」





「はぁ……」




ライトの暑さと慣れない撮影に、ため息が出る。



「千代ちゃん、お疲れ様。はい、お茶」




「ありがとう、拓巳くん。撮影って大変だね……」



「初めてには見えないくらい、表情もポーズとか姿勢も良かったよ?」



「そうですか?」



「うん。ね、悠太くん」




「………そうだね」


表情が暗い。


私が勝手に拓巳くんのところに来たから?それともモデルをやるって言ったから?



「また拗ねてる?」



「拗ねてないし」



「俺と千代ちゃんの距離が近くて、嫉妬しちゃっだよねー」



嫉妬……?



「だから、違うって言ってるじゃん。拓巳くん執拗い」



やっぱり不機嫌だ。



帰り、ちゃんと謝ろう。