「千代、来週の土曜日に遊園地行かない?」
「遊園地?」
「そう。この間出演したバラエティ番組のプロデューサーに貰ったんだよね」
ヒラヒラと2枚のチケットを揺らして見せた。
「来週の土曜日は何も予定ないし、全然問題ないよ」
「なら良かった。付き合ってからの初デート、だね」
悠太の嬉しそうな表情に、またドキドキする。
こんなにもドキドキするなんて、病気なのかな。
と思ってしまうくらい、心臓の高鳴りは激しい。
例えばそう、悠太の顔を見るだけで。
ドクン、ドクンと。
だから、直ぐに視線をそらしてしまうのだけど。
「僕が迎えに来てもいいんだけど、折角だし、待ち合わせしない?」
「それって大丈夫かな。一応、私達テレビに出てるわけだし、その……」
悠太の変装は少し雰囲気は変わるけど、バレバレなんだもの。
1人でいたりなんてしたら、すぐにファンの子達にみつかって群がられたり______
そうしたら私どうすればいいの。
それと、パパラッチとかって、どこに潜んでるの!?
もし撮られでもしたら……!
そもそも2人で出掛けるべきじゃない!?
そんなことを考えていると、だんだんと自分の顔が青ざめている気がした。
「ち、千代……?おーい」
「あ、えっと、待ち合わせの話だっけ」
「無難に駅前でいいかな」
駅前、休日、人がたくさん……!
「だ、大丈夫……?」
今まで全然気にしていなかったのに、こういう状況になって急に不安と心配がこみ上げてきた。
「平気、平気。もし僕達の関係が見つかっても、ちゃんと公表すればいいし」
そう軽く言うけれど、簡単なことじゃないと思う。
それまでのファンに信用を裏切ることになるし、少なからず反感は買うに決まっている。
私はまだ活動期間は浅いし、どうってことないけど……でも悠太は
「僕は、アイドルの肩書きなんかよりも、千代の方が何倍も大切なんだ。だからそんなに気にしなくていいんだよ」
「悠太……。それでも、出来る限りはアイドルとしての肩書きも守ってね?」
「うん、わかってるよ」
そう言って、悠太は私の頭をなでた。
「楽しみだね、遊園地」