大きな深呼吸をすると、それまでの表情とは一変して、キリッとした表情になった。
「はーい、じゃあそろそろ続き行くよ。そろそろ頼むよ」
「はい!」
その後の撮影は順調だった。
気づけばもうラストのシーン。
ラストは、花火をバックにキスを交わす。
どちらからともなく。
「好き……んっ」
自然と涙が零れた。
涙を流すシーンじゃない筈だったのにね。
花火が打ち上がる中、キスを交わした2人は見つめ合う。
「……カット!!!」
「お疲れ様でした!」
「お疲れ様です!」
クランクアップだ。
「泣けてくるよ!凄まじい演技力だった!ありがとう!」
「こちらこそ、本当にありがとうございました」
花束が渡され、無事ドラマの撮影は終了した。
「千代、お疲れ様」
「ありがとう。悠太もお疲れ様」
「ドキドキで胸が張り裂けそうかも」
「ええ!?」
「今すぐチューしちゃいたいくらい」
「____いよ」
「え?」
「いいよ、チューしても」
「……ち、千代?」
目が点になってる。
そりゃそうだよね。
「なーんて、嘘に決まってるでしょう?」
本当にキスするのは、もう少し後がいいな。
「び、びっくりした」
「えへへ」
「っ……その顔、反則だ……」
暗くてもわかるくらい、耳も顔も真っ赤だ。
「そういう悠太こそ、反則……だよ」


