夏休みというものはあっという間に終わり、2学期が始まった。



自分の学校の制服を着るのに少し違和感を感じる。



ドラマの放送も、残すところあと3話。



撮影はあと1話。



何故か脚本家さんと監督さんの結末について食い違っているらしく、撮影が2回分押しているのだ。



それにはもう、ドラマ関係者全員がたじたじだ。



撮影が止まっているのは、丁度美琴がどちらを選ぶのかの選択を迫られているシーンだ。




どうも、脚本家さん的には玲を選ぶ予定なのだが、監督が奏派で、対立しているそうだ。



始業式が終わったその日、私は監督さんと脚本家さんに呼び出された。





「で、千代ちゃんはどっちが良いと思う」



と、監督さんが腕を組みながら問う。



「私は断然玲を推すよ。玲の優しいさと誠実さに美琴はメロメロだと思うんだよ。逆に奏は我が儘なところがあるし、子供っぽいというか……美琴とは姉弟のような気がしてね」



と、脚本家さん。




「寧ろそこがいいんじゃないか。姉弟みたいに仲が良いってことだろう。美琴も、玲には言い難い相談でも仲のいい奏には話せる。美琴は、奏相手でこそ、素で居られるんだ」




「私は_____」




私が美琴なら、どっちを選ぶ?




「よし、分かりました!玲を選ぶパターンと奏を選ぶパターンの二種類の脚本を書きますよ!!」



私が答えをいう前に、脚本家さんの答えが出たようだ。



「ほう、それで?」




「本番、美琴役の千代さんが選択した方のシナリオで最後までいきましょう!」




「ふむ、分かった」




ええ、それでいいの!?



私が呼ばれるまでも無かったような。



でも、つまりは私自身が選ばなければならないってことだよね……。



もの凄く重大責任だよね!?



話がまとまったという安心と、重大責任を任された重圧が交差した。




「玲のバージョンは出来ていますので、明後日までにはチェックを頂ける様にします」




「ああ、分かった。なら明々後日には役者含める関係者全員に台本が渡るように」




「はい!では今すぐにでも!」