「お前、名は?」

サリヤの言葉に、
少女はカタカタと小さい身体を震わせた。
まだ、四歳にも満たない少女のように見える。

「お前、まさか・・・」

『サリヤ。』

サリヤが不穏そうな瞳を少女に投げかけると、
黒ヒョウが宙を舞ってサリヤの隣に舞い降りた。
少女からひきつった悲鳴が漏れる。
さらに、小刻みに少女の身体が震え始めた。

『この小娘・・・』

「ああ・・・どうやら、声が出ないらしいな。
よほど怖い目にでもあったんだろう。」

そう言ってサリヤは、
優しく少女の頭を撫でた。
黒いふわふわとした髪の毛が指にからみつく。

『どうするんだ?』

「決まっている。
お前がわたしにしてくれたことを、
してやるまでだ。」

『・・・そうか。』

「バロン!」

サリヤが叫ぶと、
一匹の白い狼が走り寄ってきた。

『何だ?サリヤ。』

「この娘をわたしたちの家まで。」

『連れて帰るのか?!』

「ああ、ニオイならすぐ消える。そうだろう?」

『まぁ、そうだけどよぉ・・・』

「なら、良いだろ?」

サリヤの言葉に、
バロンと呼ばれた白い狼はため息を吐いた。
そしてツカツカと少女の傍に近付くと、
ゆっくりと跪いた。