私と彼のマイペース



勉強が出来るだけじゃなくて、自分が進みたい道もすんなり決められるぐらい、もう少し自分を誇れるものがあったら……。

夢だって、もっと簡単に私の手元にあったはず。


自分のことを一番分かっていない自分なんて嫌だ。

もっと、完璧に自分のことを理解できたなら……。


「完璧な人なんていねぇよ」


芯の強い声が聞こえて、俯いていた顔を上げる。朝倉くんが力強い瞳で真っ直ぐ私を見ていた。


「なんでも完璧に出来るやつなんていねぇよ。出来ることを少しずつ増やして、人は成長出来るんだ。だから折原の勉強が出来るっていう特技も、意味がねぇわけじゃねぇって」

「……朝倉くんが言ったんだよ。私のこと、完璧な人だと思ってたって。それなのにそんな人はいないなんて、変なこと言うんだね」


矛盾を嘲笑しながら指摘しても、朝倉くんはむきになることもせずに、ただじっと私を見つめていた。

冷静な目つきを見て、この人って派手で軽い感じの見た目によらずに、根はしっかりとしている人なんだなって思った。見た目で判断していた私が悪いんだけど……。

自分のペースを持っている彼が、そのペースで私を少しずつ揺さぶってくる。


「ああ、そうだよ。だから完璧なやつだって折原のこと思ったとき、こいつ変だなって思った」

「私、変なんだ……」

「でも、折原のことを知った今はそう思わない。むしろ人間らしくていいと思うぜ。自分のことで悩めるなんて、生きてる人間の特権だからな」

「悩むなんて……そんなにいいものじゃないけどね」

「それでも、悩みがない人生の方がつまんねぇよ」


何を根拠に朝倉くんが言っているのか分からないけど、なぜだか彼が言っているからこそ、その言葉に温かみを感じる。

背中を押されているような力を感じる。