私と彼のマイペース



「夢を持つタイミングなんて、自分のペースだろ? 友達は友達なんだから、そんな比べて焦る必要ないじゃん」

「そんなこと言うけど、朝倉くんは焦らずにいられるの? 自分の友達なんて、一部はもう進学先まで確定したりしてるんだよ? それにもう、夏休みだよ? 今この瞬間に、みんなは夢に向かって自分がやるべきことをしてる。おまけに夏休みが終われば、あっという間に時間は過ぎてくのに……。私はその時間を、まだ何を目指すべきなのか決めることも出来ずに無駄に過ごしてる。いくら勉強が出来たって、友達みたいに夢とかなくちゃ何も意味がないよっ……!」


感情のままにまくし立てながら声を荒らげると、朝倉くんは少し困ったように表情を固まらせた。

間違ったことなど言っていない朝倉くんにそんな顔をさせてしまって、ちくちくとした痛みが胸を襲う。目を合わせていられなくなり、俯くように目を逸らした。

……だけど、私が言ったことも間違いなんかじゃなかった。


今までどれだけ成績がよくても、将来の夢のことを輝いた瞳で語る友達には敵わない気がしていた。

誰に何を言われようが揺るがない決意で前を見据える友達は、私よりも遥か先を歩いていく。

そんな友達を見ていると、どれだけ努力して積み上げてきた成績も、ただのお飾りに思えた。


次から次へと大学や専門学校を志望し、おまけに早くも合格する友達を見て、羨ましいと思わなかったわけじゃない。ぐるぐると回る渦の中から脱出することが出来なくて、焦らなかったわけでもない。

友達の前ではずっと平気なフリをして過ごして、置いていかれないように追いつこうとするだけで精一杯だった。そうしていく中で、さらに自分の行く先を見失っていた。


「……朝倉くんのイメージ通り、本当に完璧な人になれたらよかったのに」


か細い声で呟いた。