「折原、あれ見てみろよ!」
「えっ?」
必死に手で顔を隠す私の腕を引いて、朝倉くんが私を窓辺に近づけさせる。
「あれ! さっき俺らが飛ばした紙ひこうきだぜ!? まだ飛んでるよ!」
興奮気味に窓の外を指差す彼につられて、私も窓に張りつく勢いで空に目を凝らした。
そして……すぐに見つけた。
雲一つない快晴の空の中を悠々と泳ぐ、夢を託したあの小さな希望の羽を。
「……ほんとだ、すごい……」
「な? あの紙ひこうきは大丈夫だって言っただろう?」
恐らくグラウンドの向こう側を飛んでいるあれを無邪気に指差しながら、朝倉くんは私の背中もバシバシと叩く。
私はその痛さもあまり感じないくらい、遠くを飛び続けているあの紙ひこうきに見とれていた。
朝倉くんが引き合わせてくれた、私が見失っていた夢。
その大切な夢と、同じくらい大切な彼の夢。
二人の夢を乗せた紙ひこうきは、今もなお広い世界でその存在を示している。
……それを見ていたら、本当に大丈夫だろうって思えた。
確かな根拠などではないのに、私の夢も、彼の夢も、必ずいつか叶う気がしたんだ。
私達が、それぞれのペースで歩んだその先で。
「こらあ、二人とも! 逃げるんじゃない!」
力強い紙ひこうきに心を突き動かされていると、感動を台無しにするようなしゃがれた声が迫ってきた。
さっき私と朝倉くんが走ってきた廊下の方を確認すれば、もう100メートル後方にあの生徒指導の先生が走ってきている姿が見える。



