私と彼のマイペース



「昨日、補習があったんだけどさ。寝坊してそれサボったから、今日反省文を書かされてたんだ」

「そ、それを、今日またサボっ……たってこと?」

「そう。だってさ、なんかもったいねぇじゃん? こんな天気いい日に、狭苦しい生徒指導室で原稿用紙に向き合ってるなんてさ?」

「そ、それはっ、最初にサボったのが、悪い、んじゃ……?」


率直な意見を彼の背中に投げかける。でも彼はははっと苦笑いしてそれを受け流した。

廊下の曲がり角に差し掛かり、朝倉くんはスピードを落とすことなくそこを曲がっていく。

引っ張られながら走っている私は、その勢いによる遠心力で壁にぶつかりそうになった。

そんな私の存在なんて忘れてしまったみたいに、朝倉くんは窓の外の真っ青な夏空に笑顔を向けている。

その笑顔は青空を明るく照らしている太陽にそっくりで、悔しいことにすごく似合っていて綺麗だなって思った。

思ったけど、それよりも……。


ほんと、朝倉くんはマイペースすぎるよ!

巻き込まれている私の身にもなってほしい。


「あっ!」


走っていた朝倉くんが突然足を止めた。

私がその動きを予測するなんてこと、到底無理だったわけで。猛スピードの勢いのまま、自由気ままな彼の背中にぶつかってしまった。


「ぎゃあっ!」

「うお、なんつう悲鳴出してんだよ」

「誰のせいで、こんな目に遭ってると思ってるのよ……」


痩せて見えていた朝倉くんだけど、ぶつかってしまった背中は思いのほかがっちりしていた。

私がぶつかった勢いで大してよろけることもなくて、朝倉くんも一人の男の子なんだな……って、唐突に余計なことを意識してしまった。

恥ずかしさと変な照れで顔が熱くなるのを感じて、それを隠すように突撃してぶつけた鼻をさする。忘れてたけど……結構痛い。