「あの、まさかとは思うけど……。それ、飛ばすつもりじゃないよね?」
「えっ? 普通に飛ばすつもりだけど?」
そう言いながら開けっ放しになっていた窓の外に向かって、もうすでに紙ひこうきを飛ばそうと構えている。私はその手が動かないようにしっかりと掴んで言った。
「ちょっと! 進路希望調査を飛ばすなんて、どういうつもりなの? それ、先生に提出しなきゃいけないのに!」
「そんなの、もう一枚先生にもらえばいいだろ? このプリントには、もう俺らの夢を託したんだから」
自分がしようとしていることに悪びれずに開き直る彼にも驚いたけど、最後の言葉にはもっと驚いた。そんな私の表情で分かったのか、朝倉くんは口角を上げて言う。
「賭けようぜ? この紙ひこうきにさ。もしこの紙ひこうきがあのグラウンドの向こうまで飛んでいったら、絶対自分の夢を諦めないってことを」
「……そんなの、なんの意味があるの? それに、もしも途中で落ちちゃったりしたら……」
「大丈夫だって! 俺の折り紙の腕は生半可じゃねぇからさ」
彼の腕なんかに自分の夢を賭けたくないと思っていると、朝倉くんはもう一度大丈夫だと言って私の腕からすり抜けた。
「信じてみろよ。自分の夢が乗った紙ひこうきなら、どこまでも飛んで行くんだってこと。苦労して見つけた夢は、何があっても貫き通すだろ?」
その言葉を聞いたら、もう彼を止めようとは思わなかった。



