「う、うーん……。それはどうだろう。私、小学生の頃に英会話を習ってたことがあって、その頃は朝倉くんが言うように誰にも負けたくないって思いで熱心に習ってた気がする。でも今は、どうなんだろう……」
英語の授業も勉強も、決して嫌いなわけじゃない。むしろ好きな方だ。
ただ、朝倉くんが言う思いを抱いているかと聞かれると、真っ直ぐに頷くことは出来ない。
「……でも、折原の参考書は正直だと思うけど?」
朝倉くんはいつの間にか私の参考書を開き、赤線を引いてチェックを入れたり重要事項を書き込んであるページの数々を見ている。
それは、私がずっと積み重ねてきたものの中の一つだった。
「俺にはこれが、折原の夢に見えるけどなぁ」
そう言いながら彼は、ページを開いたままの状態で参考書を私に手渡す。
ずっしりと重量のある参考書は、彼の言う通り私の希望が詰まっているようだった。
腕に伝わる重みをしっかりと受け止めていると、いつしか忘れてしまっていた志が頭の中をよぎった。
「……そういえば私、英会話を習っていた頃は、英語関係の仕事がしたいって思ってたかもしれない」
すっかり薄れていた記憶を言葉にすると、それは鮮明に蘇ってくる。
ただ、純粋に英語を習うことが楽しいと思っていた頃は、これをずっと続けられる職業に就けたらいいと思っていた。
そして出来ることならずっと、その世界に触れてみたくて……。
「――英語を使って、広い世界を歩いてみたいって、思ってた」
まだ世界の広さもよく知らず、ただ無邪気に好きなことをずっと好きでいたいと思っていた頃。そんな願望が叶う日は当たり前に訪れるものだと信じ込んでいた。



