「……朝倉くんは、悩みあるの?」
「あるよ。そりゃあもう、たくさんな!」
「えっ、あるんだ……」
この学校には校則がある。染髪もアクセサリーの着用もダメで、制服を大っぴらに着崩すのも禁止されている。
そんな世界で、毎日自分が好きな格好を堂々と貫いている朝倉くん。
自分のペースで好きなようにこの世界を歩いているように思えるけど、そんな彼にも悩みがあるなんて……。
意外だ、と思わず露骨に顔に出してしまうと、それはしっかりと伝わったみたいで。リスみたいに頬を大きく膨らました。彼の頬に入っているのは木の実じゃなくて空気だけど。
「失礼だなー! 俺だって悩みぐらいあるっつうの! 毎日生徒指導の先生に追いかけられるから、どうやったら逃げ切れるようになるかって考えてるし……。万が一捕まって反省文を書かされることになっても、どうすれば原稿用紙5枚分を埋めずに切り抜けられるかって頭抱えてるし……」
「いや、ちょっと待って。それが朝倉くんの悩み?」
「そうだけど?」
「それはそこに悩む以前に、朝倉くんが生活態度を直せばいい話だと思うんだけどなぁ……」
でも、あれか。
それが出来ないからそのあとの段階で悩んでるんだっけ?
あれ? なんかこれって、もしかして堂々巡りの悩みだったりするのかな?
……でもなんか、朝倉くんらしい悩みかも。
彼は彼なりのペースで生きている中で、朝倉くんなりの悩みを抱えている。
それは私も、私が羨ましく思っていた友達にも当てはまることなのだろう。人それぞれ、その人が生きるペースの中で何かしらの壁にぶつかっている。



