幕末の雪

「……」


「黙るんですかぁ?それに、僕や一君も酔ってませんよ?」


「うるせぇ!」


「こら歳。鷹尾君が起きてしまうだろ」


「あのなぁ近藤さん…!」


沖田に怒鳴る土方を近藤がなだめ、結局は土方が悪者として収まってしまう。


これも、やはり三人だ。


先ほど三馬鹿呼ばわりされた三人や、山南、斎藤も含め微笑ましくそれを見ていた。


昔から何ら変わらない後ろ姿で、懐かしくあの季節が蘇る。


しかし、土方のおぶる人物だけは、その思い出される過去に姿がないのであった。


ーーーー


粘土質の土の上を、足跡がつくぐらい強く踏み付け歩く土方。


今より結った髪は短く、肩ぐらいまでしか長さがなかった。腰に武士のそれを帯しておらず、袴も今よりも古臭かった。


「土方さん怒ってるんですか?」


その時も同じように、集団の前を歩く土方の隣に並んだ沖田が、ひょっこりと顔を覗かせていた。


土方と違い軽い足取りの沖田。


辺りが田に囲まれて、風が吹く度に新鮮な草の香りが漂う。


その日は近くである夏祭りに向かう最中で、傾いた西日が田に張られた水を橙色の湖に変えていた。


歩き慣れた景色には目もくれず、土方は沖田を無視して歩き続ける。


「無視なんて酷いじゃないですか」


「総司。どうしたんだ?」


頬を膨らませた沖田の側に寄るようにして尋ねたのは近藤だ。


沖田は振り返るなり、聞いてくださいよ近藤さん!と、目を輝かせる。


一変して明るい声を沖田が発したのを聞き、土方がピクリと肩を揺らす。


(しまっ……)