幕末の雪

組み上げた水を桶に移しながら藤堂は問うた。


「陽の髪、赤黒い薔薇みたいな色してるよな。普通髪の毛ってさ、あんな色になんのかな?」


口にこそしなかったが、出会った日からずっと不思議に思っていた。


藤堂も少し色素の抜けた焦げ茶の髪色だが、赤黒い髪色なんていくら日に焼けてもなる色ではない。


「さあな。俺が知ったこっちゃねえよ」


考えて返したような返答ではなかったが、原田は何時ものように気さくな笑顔で答えた。


(その笑顔、陽に向けてくれよ)


口にすれば原田の機嫌を損ねてしまいそうだったので、藤堂は桶を抱えて陽の部屋へ向かった。


その後ろ姿を、原田は真剣な眼差しで見つめていた。


午前七時。幹部隊士から平隊士、局長や副長も含め全員が朝礼のため大広間に集まった。


四角形を作るように、縦横を合わせ正座した平隊士と、離れて縦一列に座る幹部隊士。


当然、陽はほとんど(幹部隊士以外)全員を初めて目にしたが、同じく隊士達も初めて陽を見た。


数多くの視線が突き刺さる。


だが陽はその視線を一つも気にしていない。


本人は緊張のかけらもないが、幹部隊士の数人は心配していた。


すぐ近藤と土方、山南が広間内へ入ってきて朝礼は始まった。