涙の雨と君の傘


次の日、朝起きると見事に風邪を引いていた。

あれだけ雨に打たれたんだから当たり前か。


鼻をすすりながら登校すると、教室の隅っこで、机に突っ伏して寝ている笹原の姿があった。


あれがいつもの彼のスタイルだ。

ああやって、見えない壁の中で、ひとり静かに過ごしている。


あまりにいつも通りだから、昨日笹原と過ごした短い時間は、実は夢の中でのことだったんじゃないかと思えてきた。


もし夢だったなら、雨に打たれたのも夢で、

それなのに現実で風邪を引いた私は、とんだまぬけだ。




笹原と関わることがないまま放課後になり、

私はひとりで生徒玄関の下駄箱前に立っていた。


アイツを待ってるんだけど、なかなか来ない。

チラチラ廊下を気にしていたら、ひょろっとした長身の男前が現れた。


相変わらず覇気のない顔をした笹原だ。