涙の雨と君の傘

ゆっくりと、雨から右手を取り戻した笹原。

濡れたままの手で、鞄から取り出したのは……。


「なんだ、持ってんじゃん」


シンプルな紺色の折りたたみ傘。


男なのに用意がいいな。

折りたたみ傘を常備してない自分が、女としてダメみたいで、ちょっと恥ずかしい。


「傘、持ってないの?」

「うん。雨降ると思ってなかったし」

「そう。……入ってく?」


ちらりと、笹原が私を見て言った。


びっくりした。

一匹狼の笹原が、そんなことを言うのが意外過ぎて。


正直に言おう。

ドキッともした。


そんな心の動揺は、すぐに雨の中に投げ捨てて、笑ったけれど。


「やめとく。一応彼氏持ちだし」

「……でも」

「浮気されてんだけどね。でもさ、私ならイヤだからさ。アイツが他の女の子と相合い傘してたら」

「そう……」