涙の雨と君の傘

生徒玄関に着いて、靴を履き替えようとした時だ。

ザァーッと、激しく雨が降り始めたのは。


「ええ~……最悪」


雨が降る予報じゃなかったのに。

通り雨だろうか。


バケツをひっくり返したような、ってこういうのを言うんだろうな。

待ってたら止まないかな。


なんて望みの薄い期待をしながら、出口に立って空を見上げていると、隣に笹原が立った。


「すっごい雨だねー」

「うん」

「まるで私の涙のよう」

「……」

「なんちゃって」


おっと。

ミステリアス笹原に白けた目をされてしまった。



笹原が、黙って外に向かって左手を伸ばした。

雨に差し出された手が、無数の雫をはじく。


ぼんやりと、笹原の白い手が輝いて見えるようで。



きれい。


口の中だけでそっと、呟いた。