涙の雨と君の傘

「笹原……なんで」


息を切らせた笹原が、不機嫌そうな顔で私を見ていた。


そのまままるで、抱きしめるみたいに引き寄せられる。


いつかと同じ、笹原の優しい匂いに包まれた。



「この子に何か用?」


笹原の冷めた声に、4人は顔を見合わせて、見つかって良かったねと言いながら逃げるように去っていった。


小さなため息が、私の頭のてっぺんに落とされる。


「笹原……?」

「いまのなに。ナンパされてたの?」

「え。えっと……ちがう、かな? 道聞いたんだけど、あっちも修学旅行生で」

「やっぱり迷ったんだ?」


うっと言葉に詰まった私に、笹原は仕方ないなと笑った。


見送ったあと、迷うんじゃないかと心配して後を追ってくれたらしい。

探していたら、4人の男に絡まれている私を見つけて焦ったと。



笹原って……いったいどこまで優しいの?


優しくされ慣れてないせいで、うっかり泣きそうになるからやめてほしい。


「地図アプリがあるんじゃなかったっけ?」

「そうなんだけど……このアプリ、絶対不具合起こしてるんだよ」

「不具合起こしてんのは名瀬の頭じゃないの」

「さ、笹原がさらっと毒を吐いてくる……」


スマホを貸せと言われて渡すと、笹原はアプリで地図を確認して、辺りを見回した。


「待ち合わせの時間は?」

「とっくに過ぎてて、アイツももう着いて待ってるって……」

「じゃあ急ごう」


大きな手が、私の手をつかむ。

笹原の手は、やっぱりひんやりと冷たかった。