涙の雨と君の傘



修学旅行本番。

初日ですでに、私は楽しいメーターを振り切っていた。


だって笹原が、あの笹原が笑顔の大盤振る舞いなのだ。

いつも表情の変化に乏しい、覇気のない表情をしている笹原が、ムダに整った顔をキラキラさせている。


クラスの女子はスマホで盗撮しまくってるし、同じグループの女子なんか赤面して固まり倒れそうな勢いだった。


気持ちはわかる。

私だって写真撮ったし、直視したら心臓な変な具合にドキドキしてしまったから。



「笹原、楽しい?」

「うん。楽しい。来て良かった」

「あはは、何それ。来ないつもりだったの?」


笹原はその質問に、曖昧に笑って答えなかった。


そうか。

もしかしたら本当に、来ないつもりだったのかもしれない。

笹原はクラスに特別仲の良い友だちもいなかったから。


もし……。

笹原が修学旅行に参加することに決めた理由の中に、私の存在があったのなら。


それは、とても嬉しくて、誇らしいことだと思った。




二日目。

丸一日、グループでの自由行動の今日、私はみんなにちょっと抜けることをお願いしていた。


別のクラスのアイツも、同じようにお願いしてるはず。

お互いのグループの予定表を照らし合わせて、待ち合わせの時間と場所ももう決めてあった。


「迷うんじゃないの?」

「大丈夫だって。子どもじゃなし。地図アプリもあるからさ」


心配する笹原にそう言って、私はひとり、グループを抜けてアイツとの待ち合わせ場所へと向かった。