涙の雨と君の傘

まじまじと、笹原の整った顔を見た。

相変わらず覇気のない、冷めたような表情。


「え……や、い、いいよ」

「なんで?」

「だって……悪いし。舞台挨拶なんて、滅多に行けるもんじゃないし。それに、それに……アイツ、映画にあんま興味ないし」


映画は行きたいけど。

ものすごーく行きたいけど。


私がそう言うと、笹原は笑った。


「まあ、とりあえず誘ってみなよ。ダメだったら、俺が付き合うから」

「えっ! 笹原、こういうの興味あるの?」

「少女漫画とかラブストーリーはあんまり。でも映画は好きだよ」

「ふぅん……そっか」


好きなんだ、映画。

だったらこのチケット、笹原が使えばいいのに。


でも私にくれちゃうんだ。

私のボロボロでみっともない、恋の為に。



「……ありがとう。一応誘ってみる」

「うん」

「フラれたら、責任取って付き合ってよね」

「はいはい」






その放課後、アイツを映画に誘ってみた。

どうせ断られると思ってたから、軽く言ったのに。


「暇だし、行ってもいいけど」なんて、たいして興味もなさそうな顔でOKされてしまった。


喜ぶところなのに、絶対嬉しく思わなきゃいけないところなのに、

少しがっかりしてる自分がいて、戸惑った。