涙の雨と君の傘


夏休みが終わっても、私とアイツの関係は変わらず。


その代わり、笹原との関係は少しだけ、近づいたように感じていた。

ただのクラスメイトから、そこそこ仲の良い友人、くらいにはなったように思う。


笹原の栄養状態が気になって、お弁当を多めにして、おかずを分けてあげたりしていたら、

元々私たちの関係を怪しんでいた女子たちから、もっと詮索されるようになった。



しばらくすると、私と笹原が付き合っている、という噂が流れ始めて、

聞かれる度にその都度否定していたけれど、人の口に戸を立てることはできない。


とうとうアイツにまで、笹原との噂はどういうことなのか、問い詰められた。

いつもと立場が逆転して、動揺するよりもなんだかおかしかった。


もちろん否定したけど、アイツは納得してないようで、なんだか連絡や放課後の誘いが頻繁になってきた。



「結果的に良かったね。名瀬のことが気になって、浮気どころじゃないんでしょ」

「う~ん。素直に喜んでいいものか」

「いいんじゃないの。名瀬のことが好きなのは間違いないみたいだし」


昼休み、お弁当を食べながら、笹原がつまらなそうに言う。

つまらなそうと言っても、笹原は常時こんな感じで、淡々としているのだけれど。


「どうだろね。自分のものがとられそうと思って、ちょっと焦ってるってことでしょ? なんかそれ、子どもが普段使ってないおもちゃを、他の子に使われそうになって、途端に魅力的に思えて独占しようとしてるみたいでさ」

「ああ……確かに」